【本文より引用】
「世界で一番寒いところは南極大陸であるが、南極には観測隊員はいても、生活している普通の人たちはいない。ところが北半球での最低気温の記録は、人の住む、れっきとした街で記録されている。
1933年(昭和8年)、シベリアのオイミヤコンで氷点下68度を記録。
さらに1964年(昭和39年)には、同地で何と氷点下71度を記録しているのである。
しかし、いったいこれほどの低温の中での生活とはどんなものなのだろう。第一、気温を測るのだって、水銀温度計では水銀が凍って役に立たない。
氷点下38度以下になる場合は、アルコール温度計を使用しなければならない。
ちなみに日本の最低気温の記録は、1902年(明治35年)1月25日に旭川で観測された氷点下41.0度。この日は、吹雪の八甲田山で青森第五連隊遭難の大惨事が起こっている。
以前テレビの取材で、私は氷点下70度の世界を体験した。といっても、実際の自然界での体験ではなく、北海道大学低温科学研究所の、人工的に作り出した低温室でのことだ。」
「実際のシベリアでは、さすがに氷点下70度まではなかなか下がらなくても、氷点下50〜60度は珍しくない。これほどの低温だと、精密機器が満載された現代の飛行機は危険で飛べない。さらにここでは、自動車は凍った 川の上でもスリップせずに平気で走ることができる。スリップはタイヤの摩擦で氷の表面が溶けて水の膜ができたときに起こるのだが、あまりの低温のためにその水の膜ができない。したがってどんなに雪が積もっていても、同じ理由でスキーやスケートができない、という世界でもある。」
(P11-14「氷点下70度の世界」より)
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